愛ちゃんのバースデーソング

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巨大な簡易格納庫には航空自衛隊が誇る最新鋭戦闘爆撃機ZERO(ゼロ)が並んでいた。 第一小隊の6機は出撃準備が終わっていて、昨日出撃した第二小隊の6機は整備中で、25名の整備兵が手分けをして整備作業を行っている。 格納庫の奥の2階部分は会議室になっていて、今しがた打ち合わせの終わった6名のパイロットが顔を出した。 先頭のパイロットはトントントンとリズムを刻んで階段を跳ねるように下りてくる。動きは若者のようだが、シルバー自衛隊員と呼ばれる高齢者の南ハルコで、入隊前は大型バスの運転手をしていた普通の市民だ。 69歳の最高齢ということもあって第一小隊の小隊長を務めているが、4日後の5月6日には70歳の誕生日を迎えて除隊になる。その日がハルコの最後の出撃で、明日には日本に向かう輸送機に乗る予定だった。 今の望みは、早く日本に帰って高校生の優華と中学生の大貴という孫を抱きしめることだ。 ハルコの後ろに5名のパイロットが続く。皆、65歳以上の高齢者で、シルバースーツと呼ばれる迷彩色の制服姿だった。
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