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「父は私を愛していたのよ」
とてつもなく深い言葉に、颯太は飲み込まれるような不安を感じる。
どう愛されていたのか、それを尋ねる事を躊躇した。場合によってはまた発作を起こしかねない。
「大丈夫、それはもう乗り越えているの」
彼女にとっては、その後に起こった出来事の方が痛みであり、ずいぶんと過去であるそれらは大した問題ではないようだ。
その様子は痛々しく、颯太は指先に痺れを感じた。たった一人の人間に集中する数々の不安。
たった一人の、身体に。
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