石黒 三枝の場合

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「私は、彼女を愛してしまいました」 まるで懺悔のような言葉に颯太の脳は痺れる。つい先日までは相手方の苦しみを追っていたのだ。けれど、けっして混同してはならない。 本当ははっきりと記憶に残っているそれらを、まるで始めて聞くかのように、彼女の話しに耳を傾ける。 二人の出会い、甘いひと時、そして別れ。 男性を愛せなくてもいいのよ、二人の間にはそんな会話もあったのだろう。 想像すればとても美しい。絵に描いたような、というのはこの事なんだろう。
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