石黒 三枝の場合

18/32
前へ
/35ページ
次へ
待ち合わせは葉書を取り扱っているギフトショップ。ちょっとしたカフェスペースがある。人前での再会に取り乱す事は許されなかった。 悔しい想い出を振り返っているはずなのだが、三枝の表情は何故か穏やかだ。 「話してみると意外と楽しかったわ。話題は豊富な方だし絵が好きな人だったから。でも何よりも」 「何よりも……?」 「彼女の話しを聞けるのが幸せで」 颯太は言葉を失った。 三枝は幸せそうに両手を胸に当てる。あの時もそうだった。どんなにか辛くてもせめて会えるのなら、彼女もそう言ったのだ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加