石黒 三枝の場合

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まるで、彼女たち以外のものすべてが時を止めて見えた。颯太にはその様子が見えたのだ。 ふと止まった時を動かしたのは克哉だ。彼は悪びれもせず三枝の肩に手を置き、教室の入口を指差した。 言われた通りにそこへ歩もうとした時だ。 『みねを愛しているんだ』 彼女をたしなめるように優しく呟く彼の声が聞こえた。 「ね、私じゃなかったの。やはり若さには敵わないのだと悟ったわ。きっと彼女と喧嘩でもしていて、腹いせに私を誘ったのね」 いや、違う。颯太は何か違和感を感じた。 すっかり肩を落とした三枝を抱きしめてやる余裕もなく、静かな時間がそっと流れる。
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