石黒 三枝の場合

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「僕は大人の女性が好きだから、それには同意出来ないな」 考えがまとまるまで、それが何なのか解るまでの間でいい。そっと腕の中にしまい込んだ三枝の肩は、いつもより細く揺れていた。 「とくに、泣いている女性はたまらない」 そう言って優しく頬に指を這わせると、三枝の感情は一気にあふれ出す。 誰も信じられなくなり、誰の前でも泣けなかった大人の女が、やっと泣けたのであろう。颯太は三枝と同じだけ悲しもうと思った。 何度も何度も名前を呼ぶ。
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