case3. 石黒 三枝

石黒 三枝の場合

颯太は実に困っていた。

このクライアントがやって来る際には必ずやらなければならない事があるのだ。

部屋中を見渡し大きなため息を吐く。そして再び手と足を動かし始めた。

そのクライアントは石黒 三枝、39歳。

先日までカウンセリングを行っていた女性とも深い関わりがある。颯太の中に残る疑問点、それを紐解いてくれる存在……かもしれないが。

「これ以上は、無理だ」

時間は迫っている。どう足掻いても颯太の能力には限界がある。