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極論としか言いようがないが、それも絞り出した方法だったのだろう。颯太にも同じ考えが浮かばなかった訳ではない。
「君が美しいと思うものを、彼はあえて遠ざけた。周囲が美しくないものばかりになったとすれば、君はそれを受け入れるしかないだろう」
三枝は耳をふさぐ。
「仕事を奪ったのもそうだ。君をすべてから守るために、誰の手にもふれない、自分だけの世界に閉じ込めた」
ふさがれた耳元でもなお、颯太の吐息のような呟きは続く。
「あるいは……」
その度に颯太の吐息が甘く纏わりつく。耳をふさいでいてもいい、すべてを聞かなくちゃいけない。
「美しいものなら、汚してしまえばいい」
克哉の極論はそこに行き着いた。
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