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「苦しい?」
颯太の問いに三枝は首を左右にする。異常愛を抜け出したその瞳は、まるであの日の彼女と同じだ。
彼女という美しいものに依存し、克哉に目覚めた感情をひた隠しにしてきた過去。汚れる事を恐れる必要はもうない。
まさに絵に描いたような相思相愛だ。
異常なまでに、相思相愛だ。
颯太はひと息つくとお茶の支度を始めた。カウンセリングは、ほぼ終了だ。
やはり、導くのはここまでで、その先は三枝自身が見つけ歩んで行かなければならない。
「さすがね、母の言った通り」
これまでに見た事のない三枝の表情。おそらくこのオフィスで行われている事を母親は知っていたのだろう。
「大切にして、お母さんを」
颯太の表情もまた、いつもと違って見える。
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