石黒 三枝の場合

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「これは、いいね」 颯太の言葉に三枝は満面の笑みだ。いくつになっても女性の笑顔というものは美しく愛らしい。 近頃では若いクライアントが続いていたため、どこかしら大人の雰囲気と落ち着きを見せる三枝に、颯太自身も安らぎを覚えていた。 「いくつか書きためてあるのだけど」 三枝の仕事はイラストレーターだ。そうなるまでの道のりは大変に厳しかったと話しているが、彼女の母親の尽力のおかげで今は順調に仕事が入っている。 彼女の描くイラストというのは、主に葉書として商品化している。それを気に入ったクライアントからの要望で、最近ではインターネット上での依頼も増えてきた。 「ありがとう。僕のイメージにぴったりだ」 今回、颯太が依頼していたのは本の表紙だ。これもインターネット上で公開している物であり、持って来たのはサンプル、といったところだろうか。
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