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絵について素人の颯太、それを丁寧に説明してくれる三枝には甘えたい衝動を覚える……のだが。
彼女は突然、震え始めた。
やはり心に大きな荷物を抱えているのだ。幸せな時間を過ごしに来ている訳ではない。
「ごめん、三枝。どこかな?」
耳を塞いでいた指先を、三枝はゆっくりと動かす。おおよそ窓の方向だと理解した颯太は、慌てて道具を手に窓際へ急いだ。
ほんの一瞬で済む事なのだが、彼女にとっては命を震わせる敵であり、颯太にとっても自ら見つけるのに困難な相手。
埃だ。
「もう、大丈夫だから」
颯太はその手を除菌シートで丁寧に拭い、そして三枝を腕の中にしまい込んだ。
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