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「三枝、これを」
颯太の書いている本を手渡した。これはネット上で公開しているもので製本などはしておらず、ただプリントアウトしただけのものだ。
いくつか挿絵のほしいシーンがあり、それを彼女にお願いしようと思っていた。
ゆっくりとそれを開き静かに読み始めた三枝の表情が、あるところで変化する。これは颯太が仕掛けた事である。
「僕の過去だ。どうかな」
エッセイとでもいうのだろうか、颯太の父親について描かれたシーンだ。それは世間一般にいう駄目男であり、颯太なりにコミカルに描いてはいる。
「似てるわ」
三枝は目を閉じた。できれば思い出したくないといった様子だが、今はそういう時間だ。やはり主導権は颯太にあり、目をそらす訳にはいかない。
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