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「──多いな」
若き宮廷官吏のユリウスは、積み上げられた書物の山を見てげんなりする。
同期であるレヴァノも息を吐き出した。
「地道に片づけますか?ああ、武官の任務も大変なんだろうけど、文官は文官で大変なんだよな…。速記するにしても、きちんと解読出来るかな」
「速記なら私が引き受ける。清書を頼めるか?」
「いいのか?そうしてくれると助かる」
元は武官として宮中に入って来たユリウスは、解読と速記の才がある。
ある時、それを読める者だけが読める特殊な文字を読めたのがきっかけで、それに非凡な才を見出だした王が「この者に必要な学はすべて学ばせ、然るべき任に就かせよ」と宮中でも一目置かれる特殊捜査官の文官としての引き立てがあり、以降その任に従事していた。
目下の仕事は都の離れにある集落の薬師の書き留めた、膨大な量の雑記の清書である。それらは本来医務官の管轄するものなのであるが、その雑記は解読の難解な箇所が幾つもあり、その省の方から「こんな意味がわからない記述の解読は医務官の仕事ではない。特殊に回してください」との悲鳴が上がり、それがユリウスたちに回って来たというわけだ。
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