母のところで

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「なんで、こんなことができへんねやろ……」 掛け違えたボタンを外したり留めたり、 前合わせを裏返してみたり上下してみたり。 必死にやろうとすればするほど、 手の動きは制御を失って ボタンを留めることさえできなくなってしまった。 それにともなって、母はパニックを起こしたように 「なんで、なんで」と首を激しく横に振り、 ついには、 「あぁ、もう……、あかん、私はもうあかん……」 と、泣き崩れてしまった。
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