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「お見受けしたところ、学生さんみたいですが、警察には何か御用でもあったのですか?」
唐突に隣の男が訊いてきた。まるで世間話でもするかのような口調である。
「あっ、いえ……ちょっと、相談事というか……。知り合いの刑事さんに話を聞きに来て……」
スオウは戸惑いながらも曖昧に答えた。スオウが今抱えている問題は、簡単に誰かに話して良いというものではなかったのだ。
「そうですか。さきほども言いましたが、最近社会を賑わすような事件が多いですよね。つい先日も、何やら工事中の病院で死者が何人も出たとかありましたし。本当に怖い世の中ですね」
「あー、それならぼくもニュースで見ました」
その事件ならば、スオウも知っていた。工事中で閉鎖されていたはずの病院で、数多くの死者が出る事件が起こったのだ。詳細についてはまったく解明されておらず、今では都市伝説として語られている事件である。
「あんな不可解な事件が起きると、警察への信頼が揺らぎませんか? なにせ警察は庶民にとって最後の砦ですからね」
「はあ、まあ、そう言われればそうですね。でも、警察もしっかりと働いていると思いますよ」
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