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ようやくスオウも隣に座るこの男に対して、奇妙な違和感を抱き始めた。警察署という非日常的な空間に居るにも関わらず、ファミレスでコーヒーでも飲んでいるかのような自然体でいるこの男──。
「あんた、何者なんだよ?」
頭で考えるよりも先に、強い口調で問いただしていた。
「すみませんでした。わたくしの自己紹介がまだ済んでいませんでしたね。最初に名乗っておくべきでした。――わたくし、紫人と申します。とある方の代理人を務めております」
「シビト……?」
「さきほどのあなたの表情を観察して決めました。実はあなたに大事なお話があります。ぜひ聞いて頂きたいのですが、どうでしょうか?」
「大事な話?」
そもそもスオウはこの男とは初対面である。話があるとは思えなかった。
「ええ、あなたの妹様に関する話と言えば、聞いて頂けますか?」
「…………!」
一瞬、言葉に詰まった。この紫人という男には、もちろん妹のことは話していない。
「おまえ、やっぱりからかっているんじゃ──」
「いえ、その反対ですよ」
「反対? それはどういう意味だよ?」
「あなたの妹様を助けるという意味です」
「────!」
再度、言葉に詰まってしまった。
「あんた、まるでおれの妹のことを知っているみたいな口ぶりだな」
「はい、妹様の事件については、すでに把握済みです。ですから今日、あなたの様子を観察したくて、こうして警察に来たのです」
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