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2時間前の話である。
「簡単な手当てしかできないけど。」
誰もいない営業部で綾女が主税の擦り傷を手当てしてくれた。その間、どう説明していいかわからず、黙って俯いていた。
「他におかしいところはない?社用車、使えると思うけど、病院とか…」
「あ、ありがとう!ほんと、大丈夫。ちょっと腰を打ったけど、もともと、ほら、頑丈だし!」
慌てて辞退した。
いや、俺が言いたいのはそんな事じゃない。アレの説明をしなくては…アレ…
救急箱を片付ける綾女を見ながらぐるぐる同じ事を考えていた。
「じゃ、帰ろうか…」
綾女がバックを手にした時たっだ。
「…大久保さん…俺の話を聞いて!」
行きがかり上、ついに女装趣味の事を打ち明けたのである。
(ああ…告白前にコレを話す羽目になるとは…人として終わるより、男として終わった方がマシなのか…)
かわいいものが好きな事、綺麗なものを身につける事ができる女装が癒しである事。女性になりたいわけではない事…家族にも話した事ない秘密を話した。
「女装…」
綾女は驚いたようだった。
そりゃそうだろう。中性的な細マッチョの芸能人が仕事で女装するのとはワケが違う。
「…私、参加してみたい。」
「は…」
「楽しそう。あ、事前に申し込みとか必要?」
「は…」
「しまむらだったら全部揃うかな?」
「え、あの…」
「一緒に行っていい?行きたい!」
キラキラと目を輝かせ。まさかの神展開だったのである。
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