猪俣主税の秘密

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 主税は人事部なのだが、たまに経理の助っ人に入る。  コレと思ったものにハマりやすい性格のようで、商業高校時代にハマったのは簿記とラグビー。簿記は在学中に日商簿記1級取得という伝説の男だ。 社会人ラグビーからのスカウトを断り大学進学。卒業後、人材派遣会社に経理希望で就職したという伝説の男… 「課長、今日はほうじ茶です。」 「あー…猪俣の淹れるのが絶妙なんだよなぁ…ウチの嫁に教えてくれよ。」 「なんだかおじいさんぽいですよ…」  伝説の男である。 「あ、そういえば育成の女の子たちが今日のコンパ、猪俣にも出て欲しいって言ってたぞ。」 「えっ?課長にまで言ってきたんですか?」 「行かないのか?」 「今日は用事があって…」 「なんだ。デートか。それじゃあコンパとか行けないよなぁ。」  課長はニヤニヤと主税を見る。 「そ、そんなんじゃないですよ。前から友達と約束してて…」 「はいはい。そういう事にしとくか。じゃ、午後イチな。お茶、ごちそうさん。」  他の社員も出勤してきた。始業時間になったところでそれぞれの仕事にかかった。  (第3金曜日じゃなきゃ、おつきあいするんだけどねー)  主税はパソコンを立ち上げながら心の中で独り言を言った。 毎月第3金曜日。この日の夜は何がなんでも死守したい用事があるのだ。
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