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新規開拓と言っても、競合他社が多い中では簡単ではない。そこを綾女は地道な提案で切り開いている。派遣後アンケートの徹底。ヘアメイクや保育士など新しいジャンル。企業からの紹介キャンペーンは好評だ。
ぱっと派手な取り組みではないが、派遣先の企業、派遣される登録者ともに評価が高い。
とにかく人と会って、話をちゃんと聞き取っている印象だ。
少し目尻が上がった目と、テキパキとした話し方、淡々と業務に当たる姿がきつい印象を与えるせいか陰でお局様などと呼ばれている。
しかし…しかし、主税は見てしまったのだ。綾女が花を活けているところを。
社内のところどころに活けてある花は綾女によるものだ。多分、これをみんな知らない。掃除のおばちゃんがやっている事だと思っている。というか意識していないと思う。
主税がそれを知ったのは偶然だった。
前日やり残した事を朝のうちに片付けておこうと早く出社した時だった。エレベーターホールの飾り棚にそっと一輪挿しを置いている綾女を見かけたのだ。階段を使っていた主税に綾女は気がついてないようだった。
いつからこんな事をやっていたんだろう…
これに気がついてから注意深く観察してみることにした。季節ごとに変わる花。経理上、その予算はついていない。ということは綾女が自分で用意しているということだ。
なんでこんなことやっているんだろう?
そっと一輪挿しを置いた綾女の穏やかな横顔が繰り返し繰り返し浮かんでくる。そんな単純な興味から主税の片思いは始まったのであった。
意識し始めると離れていてもいろんなものが見えてくるものである。
陰でお局様と呼びながらも女子社員や後輩は綾女を慕っている事。月末、経理が忙しくしている時にさりげなくおやつを差し入れしてくれたり。
そして、教育企画の主任が狙っている事も…
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