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「その…ザクォーネの記事があるのですわ」
「おや、今頃かい。結界構築は10日も前なのにな」
サムナは情報伝達紙を諦めて、経済情報伝達紙を取り上げた。
「そういえばそうですわね」
サリは、はたと気付いてサムナを見た。
「何か理由でもあるのでしょうか?」
「私には判らないねえ…それで何が不満なんだい」
サリは思い出して、肩を落とす。
「わたくしの名前もないのですけれど…何よりミナのお名前がないのですわ。彩石騎士の皆さんのお名前はありますのに。一番の功労者はミナですのに」
サムナは少し考えて、言った。
「もしそんなことが書いてあったら、おまえとミナ殿は注目の的だろうね」
サリは考えた。
自分はともかく、ミナは一目置かれて当然だ。
「それはいけないことなんですの?わたくし、ミナのことをもっともっと知ってもらいたいですわ」
サムナは、うん…、と言葉を選ぶ。
「ミナ殿のことを知って、感心する者ばかりではないんだよ。ミナ殿の能力を欲しいと思い、そのためには誘拐も辞さない者がいるかもしれないね」
サリはびくりとした。
「ミナは誘拐されるんですの!?」
サムナは、いやいやと手を振った。
「もしもの話だよ。名前が公になったら…彩石判定師という、よく判らない名称よりも認識しやすく、探しやすくなるからね、あまりいいことばかりではないんだよ」
サリは衝撃にしばらく呆然として…首を傾げた。
「ですが、どうして知られていないのでしょう?わたくしたち、隠してはいませんのに」
サムナは少し考えて、それからゆったり笑った。
「ザクォーネの国のひとたちが、守ってくれたのかもしれないよ。それで記事が遅れたのかもしれない。詳細やはっきりしたことが判らないと、記事にしようがないからね」
サリは、まあ…、と呟いて、心配そうな顔をした。
「でも、サーシャ国とビルデバラン国に知らせたそうですわ。大丈夫でしょうか…」
これにはサムナも眉根を寄せた。
「そうだねえ…アーク様やユラ-カグナの考えは知れないが…国に明かすのと一般に明かすのとでは違うよ。国は多くの情報を国民に隠すものだ。様々な事情はあるが、やはり彩石判定師がどのような者か判らぬでは、情報開示の仕様がないだろう」
だが…時間の問題だとも思う。
サムナはミナの今後と、もちろん娘サリの安全を危ぶんだ。
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