その刃を振るうまで

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それを寒くなってきたからと安易に抜刀する所か、 学校というまた繊細な場所のど真ん中で、焼き芋を作る為に用いましたって。  馬鹿なんだと思った。  バレたら許可を剥奪されると思う。 焼き芋をしようって連れて来られてたから頂いたけれど、火力調整が絶妙だったのにも慣れを感じた(普通に美味しかった)。確かに便利な炎刀型(えんとうがた)だからって、暮らしの中に役立てていた。  下手したらガス代の節約にもなるからと、料理をする際にも使っているかもしれない。目を疑う程の調理時間の短縮も可能だし。振れば完成。魔法か。  やっぱり一番合戦さんは馬鹿なんだと、確信した日だった。  まあ、馬鹿な人だとは、この春豊住志織としてやって来た日から、分かっていた事ではあったけれど。年端もいかない子供みたいに純粋で、何でもすぐに信じて。  あの人しか信じるものが無い私には、分からない。 「(のろ)いが攻撃的な百鬼だからな。早く退治しないと」  餓者髑髏(がしゃどくろ)を静める方法は、一応二つ。  一つ目は、原因である死者達を供養する事。でもこれは、まず死体を探すのに時間がかかるし、その餓者髑髏一体を成しているのが、何人分の無念なのかも分からない。  大規模な組ならきちんとした手としてこちらの方法を用いるが、小さい組では手が回らず、被害を抑える為の手っ取り早い二つ目が採用される。それが私達がやろうとしている、武力行使で追い払う。  最終手段に近い手なので、推奨はされない。まず追い払った後に、死体を探し供養するのだ。  仕方が無いと分かっているのに、そう言った一番合戦さんの顔は曇っていた。  あくまで餓者髑髏とは気の毒な存在で、本来ならきちんと弔われるべきで、本当なら化けて出る事もせずに済んだだろうに、先にこちらの都合を押し付ける形を取ってしまうのを、申し訳無さそうに。  なら、なあなあにしているのを今すぐやめればいいと思う。  あなた本当は、知ってるでしょう?  恐らく國村怜十郎から聞いている筈。いや、彼女が鬼討を志したのは奴が死んでからだから、それまで國村家により記録収集されていた、この地にまつわる百鬼についての資料を、まさか読んでいない筈が無い。  今やこの町は勿論近隣地域一帯で、唯一の鬼討は彼女である。まさに二代目の國村家だ。たった四年前の私による襲撃を、知っていない筈が無い。この安定した地域の性質上、
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