その刃を振るうまで

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未だ最新のニュースとして更新されていないだろう。  じゃあ分かるでしょう。少なくともよく見ると言っている、動物達の死骸の姿で。黒い穴という時点で、この犯人は人狐と判断出来る証拠であり、そして最も有り()るのは、あの人狐の仕業だと。  考えない? どうしてまるで行動が読まれているように、自分が調べている間のエリアでは、絶対にリアルタイムで獣の死骸が発生しないのか。何で全てが向こうのタイミングよく、自分が居合わせていない場所で起きているのか。恐らく監視されている。なら誰に?  その仕事中に唯一行動を共にしているのは、どんな人物だったかな。  確か生家を追い出されたっていう、相当縁起の悪い鬼討だったと思うけれど。思えば彼女がやって来たのも、同じ年の春だよね。これって全部、本当に偶然?  ちゃんと分かってるくせに訊いてこない、その甘さが大嫌い。  私があくまで被害者だという事に重きを置いて問い質さない、その愚かしい程に清い心が。  こんなに憎いのに、どうしてあなたはそんなにも、死んだあの人に似てしまう?  突き付けられてるみたいじゃないか。言われているようなものじゃないか。お前は間違っていると、あの人に。  どうして守ってくれなかったのだ。お前は確かに最後まで、誰も呪わずにいてくれたのに。時と共に変わってしまったのか? 忘れてしまったのか?  そんな事は無い。忘れた事だって一度も無い。私の主はあなただけ。だからあなたが死んだ後も言い付け通り誰も呪わず、ひっそりとこの土地を去ったのだ。  あなただけだったから、忘れられなくてここにいるのだ。  あなただけだったから、許せなかったのだ。  この地の人間共を。  四〇〇年、経とうとも。  暫くめそめそと泣きながら彷徨って、こんな場所忘れようとしたけれど無駄だった。いやそもそも、最初から無茶な話なのである。  私はあなたじゃないと、駄目だったのだから。 「――そうだね」  暗い顔で言う彼女を、励ますように微笑んだ。  いずれ私は、彼女に殺されて死ぬのだろう。そんな気がする。  何だかんだ私は、この忌々しい女に敗北するのだ。  幼稚で繊細で、純粋な彼女の事である。四〇〇年も前の昔話に懊悩(おうのう)して、勝手に責任感と罪悪感に苛まれ、挙句結局私を斬って、この町を守るのだ。勝手に心に、私という傷を作って。  所詮は余生。あの人がいなくなった時点で、
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