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皐月が次に見たのは、見慣れない真っ白で高い天井だった。
喉がやけに乾いていて、まるで高熱にでも冒されているみたいだった──。
「水……」と、皐月が意識半ばで声にすると、手が引かれグラスを渡された。背中を支えて貰い、ゆっくり起き上がる。乾いて土のようになった喉に、水分がじんわりと染み渡る。
「……大丈夫?」
自分を支えてくれているのが誰なのか一瞬わからなくて、皐月は睫毛を何度も瞬かせ、ゆっくりとそちらを向く。
少しして、それが詠月と言う名の男であるのを思い出した。声がうまく出せなくて、皐月は頷くことで詠月に答える。
もう一度水を飲もうとして、自分の上半身が裸な事にようやく気が付いた。
驚いて固まると、詠月が申し訳なさげに眉を下げた。
「ごめん、汚れたから脱がせたよ……。その、気を失った時に君が、戻して……」
申し訳なく思った皐月が、詠月の目を見ようとするも、会った時とは逆に今度は、詠月が合わせようとしてくれない。
不思議に思った皐月は、余計にその表情を知ろうと間近で覗き込むが、詠月はどこか様子がおかしかった──。
「──皐月くん、薬は……?」
耐え切れなくなったのか、詠月がようやく声を絞り出す。
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