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人生で初めて男を──、αを誘った。つもりだった──なのに、相手は酷く辛そうな顔をした。
「──君は、何も知らないんだね…。αがどんなに野蛮な生き者かってこと……」
「……俺の、知識は義務教育程度です、けど……詠月さんも野蛮、なんですか……?」
「野蛮だよ。君が倒れた時、匂いですぐ発情期だとわかった。なのに救急車を呼ばなかった。自分でも恥ずかしいよ……僕は、他の奴とは違うと思っていたのに……思い込んでたのに……」
詠月は俯き、酷く苦しそうに呻き声を漏らした。
皐月はこんな時でもまるで他人事みたいに、どんな姿をしても詠月は綺麗なままなんだなあと──と傍観してしまう。
その頬にそっと触れると、詠月はビクリと肩を揺らした。皐月と同じくらい熱くなったその肌は滑らかで気持ち良くて、皐月はもっと触れたいと素直に思った。
「もう……君は何でこんな時に笑ってんの……」
頬が綻んだ皐月とは対照的に、叱られた犬のようにしゅんとして詠月は嘆く。
「だって──詠月さんが綺麗だから……」
「君が純真でロマンチストなんて僕の思い違いだった。君は真の魔性だ」
「ましょう……?」と皐月は、まだおかしな酔いが抜けない頭を傾げる。
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