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目の前にあるモニターが真っ黒になった。さっきまで結衣が映っていた液晶には、笑いをこらえ切れていない自分の姿が映っている。
結衣が『ともくん』と同棲をしてからというもの、彼女が家で一人にいる機会はほとんどなかった。
だが今宵、絶好の機会が訪れた。結衣の部屋は205号室。そして俺の部屋は206号室。今から結衣の部屋に行けば、俺と彼女の二人だけ……最高に楽しい時間になりそうだ。
「さて……そろそろ行くか」
俺は205号室の合鍵をポケットに入れた。もちろん、結衣の許可など得ていない。俺が勝手に作ったものだ。
そして右手に包丁を持った。
「これは天罰だ……俺という男がいながら、『二人』と浮気した罪を償ってもらう」
喫茶店で俺の告白を断った結衣。でもきっと、あれは照れ隠しだ。そうに決まっている。だって、彼女には俺こそが相応しいのだから。俺と結衣は相思相愛。だから、俺と結衣が付き合わないのはおかしい。
それなのに、どうして『ともくん』とかいう男と同棲なんかしているんだ。彼氏は俺のはずだろ?
しかも、別の男とも寝ただって?
懐の広い俺でも、さすがに看過することはできない。
「包丁を見たら、結衣は俺に謝るだろうな……」
きっと結衣は泣きながら「ごめんなさい」って涙声で言うだろう。しかも、潤んだ愛らしいあの瞳で、だ。
想像しただけなのに、妙に心が騒がしい。興奮を抑えきれず、包丁を握った手に力がこもる。
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