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「え、そうなのか?」
背後で声がして振り向くと、時山課長がドアの前に立っていた。
その手には見覚えのある模様の紙袋。
シャリルのものだ。
「小宮さんの卓上カレンダーに柳瀬の誕生日って書いてあったから。たまには俺もみんなと一緒にケーキ食うかと思って買ってきたのに。柳瀬がいらないなら俺が2個食うぞ?」
…どきん!
眼鏡ごしの拗ねるような眼差しに母性本能が刺激される。
あ、やられたみたい……
「わあ、課長、気がきくう!
食べるよね?はるかさん!」
「食べましょ!私、お茶淹れてきまあす!」
いーちゃんと志田ちゃんが賑やかに動き出す。
「はるかさん、お誕生日おめでとう」
オトメさんがパチパチと小さく拍手をしてくれて、私の涙腺が緩んでくる。
「あと、これは俺から。ケーキなんて柄でもないもの買ったから。ついでに買ってみた。これ見て春だなって思ったから」
訳のわからないことをいいながら、照れ臭そうに時山課長が紙袋から取り出したもの。
それは、ピンクと黄色のスイートピーとかすみ草のミニブーケ。
優しいパステルカラーが心にしみて、私の瞳からポロリと雫が落ちた。
【完】
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