ナーバス・ハーブティー

8/8
前へ
/44ページ
次へ
なのに、伊坂さんが席を立つそぶりはなかった。 「サラちゃん」 「…はい!」 泣き顔にならないように強気を装った。 「俺には、ごめんさないなんていちいち言わなくていい。 ごめんなさいをいう時は、嘘を吐いた時と約束を守れなかった時。な?」 伊坂さんが柔和な笑顔で言う。 「…え?」 私、フラれるんじゃないの? 「良かったら、このあとバーに行かないか?こないだ取引先のやつらと接待で行ったとこなんだけど、サラちゃん連れて行きたいなって思って。 夜景がなかなかいいんだ」 嘘みたい…バーだって! 私はハーブティの残りを飲み干したあと、「はい、行ってみたいです!」と答えた。 「良かった。じゃあ、店に席の予約を入れるから、待ってて」 俊敏にスマホを持ち、立ち上がる伊坂さん。 ロイヤルミルクティは、半分くらい残ってる。 お酒の力を借りて。 今夜あなたのこと、もっと知りたい。 【完】
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加