1. 中年、故郷に帰る

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隆生はふと、パステルブルーの空を見上げた。昨日、スカイツリーから見た東京の空も悪くはなかったが、やはり久しぶりに見る故郷の空には、何か特別なものを感じてしまう。いくら時が経とうと、この季節が来るたびに脳裏に浮かぶのは、決まって中学三年の記憶だった。 「―そういうわけで、急遽田舎に戻ってるから、本当にすまん。また夜に―ああ、すまんな。それじゃよろしく」 なぜ故郷に戻ったのか本当の理由は告げなかったが、欠勤の連絡を終えた隆生は一頻り空を見渡したあと、エアコンの効いた古いプリウスに乗り込んだ。 「お待たせ、日菜子」 そう言って隆生はポロシャツの袖で、額に滲んだ汗を拭った。 「私は大丈夫よ。それにしても、暑いね」 「ああ、夏だ」 「うん、夏ね」     
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