桂先輩の観察

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 私は薄汚れた天井から頭部付近に置いてあるスマホの画面に視線を移した。時刻は十一時四十五分。オフィスで仕事に精を出している男女が今か今かとお昼休みを待ち構えている時間だ。  ここで動かなければ人間として終わりだぞ、と私は私に警告する。だが、体は大の字のまま、まるで金縛りにあったかのように動かない。おや、生誕二十一年目にして金縛り初体験か? と勘違いをしてこのまま寝てしまいたい。本音をいえば。  かれこれ、こんな自問自答を八月の茹だるような暑さにめげもせず、一時間近く大の字のまま行っている。一応扇風機はフルパワーで私の足元でプロペラを回しているが、体中の汗は止まらない。しかし、動くのはもっと暑いし面倒だ。  ちょっと頑張れば再び夕方まで寝られる自信はある。開けていた目を瞑ってみる。そこそこの睡魔が襲ってくる。やっぱり、今日は人生初の金縛りに遭ったという自身への言い訳をして眠ろうか――そんなことを考えながらウトウトしていると、頭部付近のスマホが自己主張を始めた。  どうせすぐに静まるだろう、と高を括って睡魔に身を任せ始めたのだが、スマホは一向に自己主張を止めず震え続ける。私は仕方なく、奴の息の根を止めるため、通話ボタンを親指に全身全霊を込めて押した。 「プッシュ!」そして叫んだ。
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