桂先輩の観察

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「え、何? 何?」私の開口一番である「プッシュ!」に戸惑いながら、桂先輩は訝しげにそう言った。  続けて私が「はい、私の勝ち」と高らかに宣言すると「僕は何かに負けたんだね」と冷静に返された。 「先輩が私の声に対してビビったから私の勝ちなんです。ところで先輩。何の用ですか?  私は今、金縛りに遭っていて、ひどく忙しいのです」 「なぜ金縛りに遭っている人が電話出られんだろう。ところで、お昼ごはんにでも行かないかい?」 「桂先輩、耳が腐っているのではないですか? 私は現在、金縛りに――」 「『ひろみちゃんパフェ』を奢るよ」 「先輩、今どこにいらっしゃいます? たとえ火の中水の中、先輩の為ならどこへでも!」  電話を切り、私はようやく大の字から解放される。恐ろしや、ひろみちゃんパフェ。 ひろみちゃんパフェの効果はそれだけではない。今では金縛りもまるで最初からなかったかのように解け、不思議と体もだるくなければ、眠気もない。
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