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それは決して――決して、私が自分の気分ごときで左右される女だからではない。それだけははっきりしておこう。そういう女に見られることは多々あるけれども。
私は一度敗北してもなお、希望を見失わなかったヒーローのように立ち上がり、足元に転がっている洋服の中で、できるだけ臭いを放っていない洋服を簡単にチョイスし、部屋を出た。もう一度、肩付近をクンクン匂う。よし、大丈夫だ。
いや、大丈夫ではなかった。
外に出て、瞬時に桂先輩とお昼ごはんの約束をしてしまったことを後悔した。私の部屋が茹だるような暑さなのだから、当然外はもっと気温が高く、日差しが強い。ギンギラギンの太陽が、私の外出を拒絶しているかのようにこちらを睨んでいる。不愉快極まりない。ほかの人たちは太陽の拒絶を受け入れ、部屋にこもっているのだろう。誰一人、出歩く姿はない。
私は素早くスマホを取りだし、さっそく桂先輩に電話を掛けた。こうしている間にも背中に汗が流れる。
「先輩!」
「どうした?」
「前言撤回させてください。車で私のアパートまで迎えに来て下さい。いや、来い」
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