桂先輩の観察

6/60
前へ
/60ページ
次へ
 喫茶『ふりーだむ』の看板メニューであるひろみちゃんパフェとは、通常サイズパフェ三人前分がぎっしり詰まった巨大パフェのことで、本来、一人で食べる代物ではない。ギャル二三人が「うわー、これやばくない?」と言い合い、写真を撮り、撮った写真をSNSへ投稿したのち、みんなで仲良く食べる代物なのである。しかし、私にとってひろみちゃんパフェの量は適量であり、むしろ誰にも譲るもんか。これ全部私のものだぞ! という姿勢でいつも食している。  桂先輩はそんな様子でもしゃもしゃとひろみちゃんパフェを食べている私を、気味の悪いモンスターを見つめるような目つきで眺め、不味そうにアイスコーヒーを飲んだ。 「ここのコーヒー美味しんだけどなぁ。君のそのパフェを食う様を見ていると不思議と美味しくない」 「だったふぁ、飲まなきゃいいでひょ」私がひろみちゃんパフェを口に含んだまま言った。  平日のお昼だというのに、主婦はおろか、店内には私たち以外、カウンター奥でゴシップ雑誌を読みふけるマスターの姿しかいない。店は潰れても、この巨大パフェが無くなることが心配でならない。  ちなみに、私は質より量派だ。 「君が綺麗にパフェを食べるという考えはないのかなあ」
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加