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そんなとき、フィムは一緒に空を眺めながら、静かにヴァアレの物思いが終わるのを待った。
しばらくするとヴァアレはハッと我に返り、すこし恥ずかしそうにした後、何もなかったかのように歩きだすのだった。
険しい表情で空をみつめるヴァアレが、いったい何を考えているのかフィムにはわからないけれど、ふたりで空を見上げるこの夕方のひとときは、彼女のお気に入りの時間だった。
家に帰って、みんなと夜の食事をしたら、身支度を終わらせて、最後に日記を書いて眠る。
そうして楽しかった一日が終わり、また、楽しい一日がはじまる。
自分のそばに、いつもだれかがいてくれるというのが、フィムにはとてもうれしかった。
それは初めての経験だったから。
兄は毎日忙しくしていて、長い時間をいっしょに過ごすことは無理だったし、そんな兄に付き従っているフロウはもちろん、ミーヤとマーヤだって家の仕事に追われているから、ずっとフィムのそばにいることはできない。
それでもみんな、フィムのことを大切に思っているから、常に気にかけてくれていた。
だからさみしいなんて思ったことはない。
ひとりで過ごす時間も楽しい。
だけど、自分といっしょに同じものを見て、食べて、触れて、感じて、そんな思いを共有して分ちあえるひとが隣にいると、楽しさがどんどん大きくなる。
それをフィムは知ることができた。
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