3 フィムのにぎやかな家族

11/11
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
 そんなとき、フィムは一緒に空を眺めながら、静かにヴァアレの物思いが終わるのを待った。  しばらくするとヴァアレはハッと我に返り、すこし恥ずかしそうにした後、何もなかったかのように歩きだすのだった。  険しい表情で空をみつめるヴァアレが、いったい何を考えているのかフィムにはわからないけれど、ふたりで空を見上げるこの夕方のひとときは、彼女のお気に入りの時間だった。  家に帰って、みんなと夜の食事をしたら、身支度を終わらせて、最後に日記を書いて眠る。  そうして楽しかった一日が終わり、また、楽しい一日がはじまる。  自分のそばに、いつもだれかがいてくれるというのが、フィムにはとてもうれしかった。  それは初めての経験だったから。  兄は毎日忙しくしていて、長い時間をいっしょに過ごすことは無理だったし、そんな兄に付き従っているフロウはもちろん、ミーヤとマーヤだって家の仕事に追われているから、ずっとフィムのそばにいることはできない。  それでもみんな、フィムのことを大切に思っているから、常に気にかけてくれていた。  だからさみしいなんて思ったことはない。  ひとりで過ごす時間も楽しい。  だけど、自分といっしょに同じものを見て、食べて、触れて、感じて、そんな思いを共有して分ちあえるひとが隣にいると、楽しさがどんどん大きくなる。  それをフィムは知ることができた。  
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!