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二人の真剣な表情から見て、どうやら病院に運び込まれた当初の美幸の様子は、かなり深刻な状態だったらしかった。
「だから、もう大丈夫だってば。ちゃんと自分の名前も言えるし、草介と椎名先輩のことも分かるって。それよりも、俺、例の連続殺人犯の顔を見たんだよ!」
さすがに友人の身を気遣っていた草介も、刑事としてこの台詞を無視するわけにはいかなかったようである。
血相を変えて「本当なのか!?」と叫ぶと、美幸の両肩を掴んでがくがくと前後に揺すった。
「おまえが倒れていた場所は、第四の犯行現場とそう離れていない場所だったから、もしかすると、とは思っていたが……。本当に犯人の顔を見たのか?」
本当だと頷きかけて、美幸は、はたとある事実に気がついた。
(……確かに見たけど、相手がコウモリと人間の合いの子みたいな化け物だって言って信じてもらえるだろうか……?)
確かに自分の目で見て、その存在を確認した美幸自身でさえも、俄かには信じ難い出来事である。
はたして、現場にいなかった第三者が、こんな荒唐無稽な話を信じてくれるだろうか?
美幸は真相を話すことに幾分躊躇しながらも、このままでは埒があかないと思い直し、意を決して自分が遭遇した驚愕の出来事を二人へと語り始めたのだった。
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