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憮然とする美幸に、草介は呆れたような顔つきになった。
「おいおい、何を馬鹿なことを言ってんだよ。あの人は、ちゃんと科捜研から紹介された大学の先生だろ。第一、以前にも何度か捜査に協力してもらってるとかで、署内にもあの人のこと知ってる人たくさんいたじゃんか。三橋警部だってさぁ……」
「それはそうかもしれないけど……なんかさぁ……」
不満げに唇を尖らせる美幸に、草介は笑いながら宥めるように肩を叩いた。
「まぁ、あれだけ二枚目で頭までも良いときたら、同じ男として反感を抱くのも分からないでもないけどさ。美幸だって、結構いけてるんだから、心配するなよ。あ、もちろん、俺もいけてるけどな」
「……誰もそんなこと言ってないだろう」
拗ねた素振りでチラリと視線を流すと、件の男前の心理学者はやはりまだ美幸のことを見ていた。
黒いコートの美貌の心理学者は、名前を里見貴士と言って、なんでも都内の有名私立大学で教鞭を取っているらしい……。
初めて美幸が彼を見かけたのは、十月の上旬、この同一犯の犯行と思われる第一の事件の現場でのことだった。
やはり、他のやじ馬に混じって里見は犯行現場を見学に来ていた。
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