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「……なっ、なんで俺の名前……?」  驚く美幸に里見は謎めいた微笑を浮かべると、「またお会いしましょう」と言って、コートの裾を颯爽と翻してその場から去っていったのだった。  どこか美幸の心をかき乱すようなエゴイストの香りを残して去っていった青年を、美幸は呆然と見送った。  それが、今から一週間ほど前の出来事だった。  その後、里見から貰った名刺に記された大学に確認したところ、間違いなく里見貴士と言う名の青年犯罪心理学者がそこに勤務していると言う確認が取れた。  里見はその筋では結構な有名人らしく、警察内部でも彼の名を知っている人間は少なくなかった。 「若いのに、優秀な先生だよ」  そう言ったのは、美幸と草介にとっては大学の先輩でもある検察医の椎名真生だった。  とっくに三十路を過ぎているようには見えない童顔に、少々度のキツイ眼鏡をかけた真生は、そう言うと穏やかな声音で「それにとてもハンサムだしね」と笑いながら続けた。 「顔は関係ないでしょ、顔は」  何故か里見を褒める真生にムッとする草介に、真生はやはり穏やかに「葛城くんも桐野くんも充分ハンサムだよ」と言うと、草介を宥めるように笑った。 「そんなこと、最初から分かってますって。なぁ、美幸?」     
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