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 ただ、この第一の事件が起きた当初、誰もがこの事件がやがて東京中を恐怖のどん底へと突き落とすことになる、無差別連続殺人に発展するとは思ってもいなかったのである……。  だが、第二の事件は、その一週間後の新宿御苑で起こってしまった。  被害者は新宿の店に勤めるホステスで、当日は体調が悪く、いつもより少し早目に店を上がった帰りを犯人に襲われたらしかった。  彼女のことを心配した店のママが、夜半過ぎに彼女の携帯に電話したところ、コール音がするにもかかわらず彼女が電話に出ないことを不審に思い、店からそう遠くない彼女のアパートへ向かい、その途中の路地で彼女の遺体を発見した。  やはり第一の事件同様に、頸動脈と腹部を刃物で切り裂かれて被害者はほぼ即死だったと思われる。  そして、現場にはこの時も、凄惨な殺戮現場には不似合いな、美しい純白の薔薇が一輪その場に残されていたのだった。 ◇  それから一週間後、今回犯人が現れたのは御茶ノ水だった。  被害者は今回も若い女性で、友人と遊んだ帰り道で犯人に襲われたらしかった。 「まったく、今月に入って三人目だぜ。なぁにが、『現代の東京に甦ったジャック・ザ・リパー』だ。どう考えたって、単なる頭のおかしい殺人狂だろ」  忌ま忌ましそうに語尾荒く吐き捨てる友人の台詞に、桐野美幸はその秀麗な顔に苦い笑いを浮かべて「確かにな……」と同意した。     
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