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 むせ返るような血の匂いに、吐気がしそうな気分だったが、悽惨な現場に不釣り合いな美しい薔薇の花に、何故か瞳が引き寄せられて美幸は逸らすことが出来なかった。 「どうせまた犯人が置いてったもんだろ。毎回、毎回、自分が殺しをした現場に薔薇の花なんか残しやがって、随分と気障な野郎だぜ。絶対に警察をなめてやがる。まったく犯人の奴は、いったいどう言うつもりなんだろうな?そう言えば、そろそろこの一連の事件の犯人に関する、プロファイリングの結果が出るんじゃなかったっけ」  憤りを隠せずにそう吐き捨てる友人の台詞に、しかし美幸ははたして本当にそうなのだろうか?と、微かな違和感を覚えて首を傾げたのだった。 (こんな風に猟奇的な犯行を繰り返すような奴が、死者に手向けるように現場に薔薇の花を置いたりするだろうか?それとも、犯人はそんな二面性を持った奴なのか?)  美幸は、男にしては少しばかり繊細な美貌を曇らせると、白い手袋を履いた手で、その現場に残された薔薇の花を注意深く拾い上げた。  まだ現場検証の真っ最中だったので、美幸の行動に気づいた草介が「おい」と咎めるように声をかけてくるのに、どこか複雑な微笑で答える。 「さっき鑑識が写真を取ってたから、もう平気だろ」  薔薇の花弁の半分は血で汚れていたが、それだからこそ残された白い部分がいっそう清らかで美しく引き立って見える。     
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