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 床に強かに腰を打ちつけて情けなく呻いた美幸だったが、とりあえず特にどこも怪我をしていないことを確認してホッとする。  頭は少々痛むが、この程度なら鎮痛剤でも飲んでおけば平気だろう。  ともかく、早く署に戻って事件の顛末を上司に伝えなければと、床を這うようにして立ち上がった処で、美幸の目の前で病室のドアが内側へと開いたのだった。 「うわっ、美幸、おまえ何してんだよ!」 「桐野くん……?」  病室の中央でヨロヨロと立ち上がった美幸の元へ、驚いたような表情で草介と真生が駆け寄って来る。 「……草介、椎名先輩?」 「馬鹿、当分安静にしてろって医者が言ってたぞ。大人しく寝てろよ」  体格で勝る草介に力まかせにベッドに押し戻されそうになって、美幸は慌ててジタバタと抵抗した。 「放せよ、草介!俺は、こんな処でノンビリ寝てる暇なんかないんだから!」 「駄目だ。その様子じゃ、おまえは覚えてないみたいだけど、病院に運び込まれた時のおまえは、俺が誰かどころか、自分自身が誰かの判別もついてなかったんだぞ?念の為に脳波の検査をしてもらうことになってるんだから、大人しくベッドで待ってろよ」 「そうだよ、桐野くん。今はゆっくりと休んだ方が良い。三橋警部もそう言ってたよ」     
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