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 案の定、草介も真生もまるでキツネにでも抓まれたような妙な表情で、美幸の話を聞いている。 「……おいおい、美幸。そんなコウモリみたいな化け物が、この現代の世の中に本当に存在すると思ってるのか?」 「桐野くん、きっと何らかのショックな出来事があって、きみの記憶は混乱しているんだよ。やっぱり、少しゆっくりと休むべきだ」  心配げな表情の友人達に、美幸は余計なお世話だとばかりに睚を吊り上げた。 「嘘でもなければ、記憶が混乱してるわけでもない。誓って、全部本当のことなんだよ……。もしも、俺の証言だけじゃ信じられないと言うなら、里見に連絡を取ってもらえば分かることだ。あいつは、俺なんかよりもよっぽど事情に詳しいはずだから」  美幸の必死な形相での説明を聞いて、草介と真生は困ったように顔を見合わせた。 「……美幸、実は先刻からずっと不思議に思ってたんだが、おまえの話に出て来た『里見』って男はいったい誰なんだ?俺には、まったく聞き覚えのない名前なんだが」  美幸は、申し訳なさそうな草介の台詞に、大きく瞳を瞠った。 「何言ってんだよ、草介。犯罪心理学者の里見貴士だぜ。おまえだって何回か会ってるじゃないか……」 「いや、悪いが知らない。学者先生ってことは、結構年配の男なのか?」     
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