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同一犯の犯行と見られる前二件の殺人現場にも、やはり今美幸の手の中にあるのと同じ白い薔薇が残されていた。
ホワイト・マスターピースと言う名のこの白い薔薇が生まれたのは、一九七一年のアメリカでのことらしい。
当初、犯人の遺留品として重要な手がかりと見なされたこの薔薇のことを、いくつもの花屋を巡りながら調べているうちに、美幸はその事実を知って少しばかり複雑な気持ちになった。
何故なら一九七一年と言うのは、美幸がこの世に生まれた年でもあったからである。
そしてそれ以前に、美幸には白い薔薇に関する、とあるノスタルジックな思い出があった。
だからこそ尚更、己の甘くて切ない思い出を汚されたくなくて、この薔薇を現場に置いていったのが凶悪な犯人だと美幸は思いたくないのかもしれなかった。
(……もう、あれから二十年近く経つんだな)
遠い子供の頃の思い出を回想しながら、美幸は無意識に今日も密かにスーツのポケットの中に忍ばせていた『お守り』を、ソッと握り締めた。
「もうしわけありませんが、桐野刑事と葛城刑事に、鑑識の方で、ちょっと確認してほしいことがあるそうです」
現場を走り回っていた制服警官の一人が駆け寄って来るのに、美幸はようやく我に返ると「ああ」と頷いた。
「……すまないが、これを鑑識の方に回しておいてくれ」
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