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 鑑識に向かって「ありがとう。一応、科捜研の方に回して分析して貰って」と礼を言ってビニールパックを返した後に、今度は友人に向かってそう言葉を続けた。  僅かに眩しげにそんな美幸の視線を受け止めた草介だったが、美幸の言葉には「さぁな」と首を振った。 「まさか、吸血鬼の仕業だとでも言いたいのか?この新世紀を迎えたばかりの現代に?」  集まり出したやじ馬の方を、見るとはなしにぼんやりと見やりながら、美幸は「俺には分からない……」と呟いた。  美幸とて、別にお化けや妖怪の存在を信じているわけではなかったが、だからと言ってガチガチの現実主義者と言うわけでもない。  実際に、世の中にはありていの常識だけではどうしても説明のつかない、不可思議なことも多々存在しているのだから……。  だいたい、今回の事件には不可解な点があまりにも多かった。  アスファルトの上ならまだしも、二度目の事件現場は前日の雨で地面がやわらかくなっていた土の上での犯行だったのである。  それなのに、犯人は現場に足跡を全く残していないのだ。  現場には、被害者のハイヒールの跡しか残ってはいなかった。  まるで、犯人には足がないかのように、その痕跡は全く残されていなかったのである。  その上犯行に使用されたと思われる、『鋭い刃物のような物』の特定さえ、いまだに警察では出来ていないのだった。     
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