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その日の放課後、また昨日のように金城が来るのは遅かった。たぶん事情も同じだろうし、余計な心配をする必要はないけれど、妙なモヤモヤを抱いた。
申し訳なさそうな表情でいる金城を見ていたら、俺の方がいけないことをしているんじゃないかと思ってしまう。一緒にいるべきは俺ではないのかもしれない。
「はぁー」
鬱屈とした思いが溢れた。無意識のうちだったため、抑えようとした時には遅かった。
「…大丈夫か?」
そんな俺を見て何か心配した金城は、俺の顔色をじっと見ていた。
「あぁ…うん、大丈夫」
今できる精一杯の作り笑いを浮かべて、何とか誤魔化そうとした。こんな変な気持ちを伝えたところで迷惑でしかないし、相手を困らせるだけだと考えた。
「…そ、そっか」
あまり納得した様子ではなかったが、それ以上言及することはなかった。
その日は特に会話もないまま日は暮れていった。そして、二人で帰ろうと玄関で靴に履き替えようとした時だった。
「金城くん」
金城を呼び止める声が聞こえた。その先を見ると、可愛らしい子がいた。
「ごめん池谷、ちょっと待ってて」
悪いなというのが表情として滲み出ていて、彼の優しさが感じられた。しかしそれと同時に、その優しさが何だかイライラした。
だから、
「あぁ…っと、今日、そんな時間ないし、先帰ってるよ…」
そんな思いが表面に出る前に、この場を去りたかった。
「…そっ、か。わかった。じゃあまた明日な」
「……おう…また、明日」
彼の笑顔は眩しかった。俺は何とか表情を保ちながら、逃げるようにその場を後にした。
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