大切なもの

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池谷side ボフッとベッドに飛び込む。シャワーを浴びて間もないので、髪先にはまだ水滴が残っている。そんなことも構わず横になったため、枕はほんのり濡れて湿った。 もっと上手くできなかったのだろうか…と考えても、事実が消えるわけではない。やはり、明日ちゃんと謝ろう。気分を害してしまっただろうか。 『ごめん池谷、ちょっと待ってて』 彼の言葉が思い返される。俺はその言葉をほとんど無視した形で帰ってしまった。その時の金城の表情は覚えていない…いや、見ていない。 仰向けになって天井を眺める。ぼんやりと見ていたら、ぐにゃりと歪んで滴が目の端を伝って枕を再び濡らした。 ふと考える。自分は彼とどういう距離を考えれば良いのかということを。クラスの彼らとの付き合いは長いので、特に考えることもないのだが。金城とは、つい最近仲良くなった…というか、させてもらってる。 だからこそ、考えてしまう。今後どうなりたいか。今後も自分が彼の隣にいるというのがいまいち想像できない。やがては彼女ができて自然と離れていく気がする。 ぐしゃぐしゃと髪を掻いて、立ち上がる。 考えことを忘れたくて、俺は机に向かった。
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