異様な光景

2/2
前へ
/37ページ
次へ
誰もが振り返る美人を連れて、意気揚々と歩くブサ男。 モデルのような男と手を繋いで歩く、ときめき顔のブス。 痘痕も靨? ブスは3日で慣れる? B専? にしても、このミスマッチなカップル率は異常だった。 一昔前なら先人の目をパチクリさせるような光景が、一歩外へ出ればあたりまえの風景になっている。 大概の人が、満ち足りた顔で生活している。 自分好みの人といる幸せを噛み締めながら。 そんな異様な光景を高みの見物をしているカップルがいる。 紫外線が美容の天敵であると信じて少し神経質そうに日差しを気にしながら、なるだけ陽の当たらない場所でカフェモカをすする。 ふぅ~ 凍えた身体がじんわりと温まる。 「もう2月か~」身を寄せ合いながら歩く異様なカップルを観ながらつぶやいた。どうりで寒いわけだ。 そろそろバレンタインの準備しなきゃな。 そんな事を考えながら、外の世界をぼんやり眺めている。隣にはイケメンではないけれど、優しい彼氏。 さやかは優越感に浸りながら、窓越しの世界を気分良く見下していた。 勝ち誇った笑顔を向けた先には、ホットコーヒーのブラックを美味しそうに飲む圭介。 よく見るような、あたりまえのこの風景は ごく限られた人にしか味わえない。 とても贅沢な時間だった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加