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幻
「押しの強い三十路だなって思った」
その1ヶ月後、付き合いだした圭介に笑いながらそう言われた。
毎週末、2人はデートに明け暮れた。
夏は海、秋は温泉。アウトドア好きな圭介の影響で、頻繁に旅行にも行った。
美味しい料理に舌鼓を打ちながらお酒を飲む、愛する人と共有する時間は幸せに満ち足りていた。
半年ほど経った頃、さやかは異変に気付いた。
今まで手を繋いだり、ハグしてきていた圭介が一切触れてこなくなったのだ。
こちらから触れようとしても避けられる。
理由を聞いても「俺、ベタベタするの苦手でさ」とパサパサな乾いた言葉を浴びせられた。今までは?と聞くも、「無理してた」とまで言われた。
夜の生活も無くなり、誘っても断られるようになった。
仕事が忙しくて疲れてるんだな。
と自分の気持ちをごまかしながら圭介の態度を受け止めていた。
若い時に散々遊んできて落ち着いた人、浮気しない人、風俗行かない人だと信じていた。
圭介の言葉を心から疑う事もなく。
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