中毒

2/3
前へ
/37ページ
次へ
圭介は実は何年も前から機械風俗に通っていた。非の打ち所がない嬢との時間は至福以外何物でもなかった。 90分5万という大金も躊躇なく払えた。 見た目も最高!柔らかくすべすべした肌、声、話し方、全てが完璧だった。 嬢と付き合う事はできるかもしれない。 ただ、今の法律では結婚はできない。 そこだけがネックだった。 この年になると、やはり親孝行を考えてしまう。年老いていく両親に、孫の顔を見せたいとも思っていた。 そんな矢先に出逢ったさやかと結婚を前提に付き合っていた。 だが、嬢とどうしても比べてしまう。 生身の人間であるからこその、汚さが目についた。さやかが不潔だとか、下品だからとかそういうわけじゃない。 寝起きの浮腫んだ顔、ふと出てしまったげっぷ、食後のニンニクの匂い。 決して綺麗とは言い難い人間だからこその面がやたらと気になった。 だんだん、キスもいやになり。 抱きしめる事も、手を繋ぐ事も自らしなくなった。 さやかからのスキンシップも拒否するようになった。 不安と悲しさから責めるさやかを、冷たい眼差しであしらうようになった。 世間では、随分前からこの2人のようなカップルが増えていた。カップルだけでなく夫婦間もこの問題で離婚率が伸び続けている。 人間の欲を完璧に満たすその機械は、どんなに愛し合い信頼し合おうとも、いともたやすく2人のあいだに割って入り、そして引き裂いた。 一度でも手を出した人は、必ず中毒になった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加