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雲行きが怪しい日だった。
薄暗い部屋の中、ゆらゆらと人影が揺れる。
そこには憎悪の表情を浮かべた少女が、誰かを待つかの様に佇んで居た。
少女の足元には動かなくなった真っ赤な大人が二人倒れていた。
「なにこれ…パパ…?」
蚊の鳴くような声でそう呟いた。
少女の目は光が消え、翳り、くすんだ瞳に変わっていた。
憎悪の表情を浮かべた少女は血塗られた刃物を落とし、こっちを向いた。
「…が受けて…た屈辱は君がこれから受けてくんだ」
「君には僕……に…しんで貰う…」
彼女は上を向いて呟いた。
「じゃ…ね、………」
途中から何を言っているか分からなかった。
家を出て行く彼女を追いかけようとするが。
少女の脚は強張って動かない。
意識が朦朧として、目の前が真っ白になってゆく。
「ま…って…」
か細い声で彼女が歩む影へと手を伸ばした。
「・・・!!」
音とも言えない声が発せられた。
そして彼女は憎悪の顔をこちらへ向け叫んだ!
「エリファス!!」
「!?」
小さな部屋に響く大声と共に夢から目を覚ました。
額には汗を帯び、目が冴えていた。
「…」
「あなたうなされてたわよ…」
「ごめんベルさん、心配かけて」「気にしなくていいよ、貴方汗びっしょりじゃない」
「洗濯するから早くお風呂入ってきなさいね」
「わかった…」
まだ心拍数が上がって、強張って居た。
この夢も、何度目だろうか…
こうして少女は奇妙な一日を迎えた。
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