青春泥棒

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 こんにちは。あなたに手紙を出したころ、こちらでは記録的大雪で底冷えのする日が続いておりました。随分と返事に時間をかけてらしたのね。  今まで経験したこともないくらいの積雪で何度も足を取られながら郵便局に行きました。照り返す日光であんなに白い白いと褒めてくれた肌も若干ですが焼けてしまい、いよいよ私に魅力が無くなってしまったのだと鏡を見る度実感しています。  さて、海外に転勤してしまうとのことなので早々に本題に這入らせていただきたく思います。  3ヶ月前に子供を殺しました。  あなたと寝た最後の晩、わたしの子宮に宿った子です。  一生明かさずに生きようとも思いました。そして今すぐあなたに明かしたいとも思いました。二律背反だとおっしゃるのでしょうが全くもってその通りです。私はだから、結局のところ、殺人犯となってしまいました。  産んでしまった方が楽になるなんて考えてしまいました。そうすればきっとあなたは戻ってきてくれると。この際恥を忍んで言わせていただきますが青春泥棒さん。あなたと過ごした6年間はとってもキラ【 】ラしていました。  青春泥棒だと言ってしまえば【  】でお仕舞いなのでしょうがあの6年間は紛れもなく、どこに出しても恥ずかしくて思わず頭を掻きたくなるような青春で【 】ることに違いなかったのです。  だから、今こうしてあなたに謝ってもらおうとかそういうことを望むでもなく、だけれど報告にしては今や就職して海外工場の視察まで任じられているあなたにとって荷が重すぎる、後ろ髪を引かれるようなお話で終わらせる気もなく、ただただこの一言に尽きます。  捨てるなら私の身体ごと捨ててほしかった。  追伸、あなたが手紙をお出しになった1月16日に、あけましておめでとうは不適切です。  平成23年1月31日 桜井めぐみ  ******
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