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五年。その月日は長い。
まだ小学生だった息子は、学校の帰宅途中、突然に眠りについた。
同級生を川に突き落とした直後に眠りについたのだ。
春先の出来事で川は雪解け水で増水しており、幼い子供たちが近寄らないようにまわりの大人が気を配っていた。
が、息子たちは難なく川へと向かい、無事に引き上げられた子供たちから喧嘩をしてそうなったのだと私たち、大人は聞いた。
目を覚ましたら、ぶん殴ってやろう。
そう心に決めて五年。
私の心は既に挫けそうだ。
いつか目を覚ますかもしれない。
死ぬまで目を覚まさないかもしれない。
そんな、せめぎあいを内心でしているというのに、息子は寝ながら薄ら笑いを浮かべる。
病室で、妻が少しだけ退室したとき、私は目を覚まさない息子に声をかけた。
「お前もしかして、あの時、同級生を殺したかったのか?」
薄ら笑いを浮かべる息子の口角が更に上がったように私は感じた。
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